なにせ、出会った時があの体型だったから、すっかり忘れていた ―― 彼女が美少女、それも半端ない美少女だったことを・・・・ 美少女革命 〜 華原雅紀の場合 〜 「・・・・お前、もう一回、太らない?」 「は!?」 日曜日、珍しくどこにも出かけずのほほんっと雅紀の部屋でくつろいでいたヒトミは彼氏の一言に目を丸くした。 「それは、もしかして嫌味?」 と、ヒトミが言ったのは現在雅紀との間にあるローテーブルに乗っかった美味しそうなチーズケーキに目を落とした後だった。 それに対して慌てたのは雅紀だ。 「いや、そうじゃなくて。」 「?違うとしたら余計変だよ?」 首をかしげられて、雅紀は言葉に詰まる。 確かにごもっとも。 どこの世界に、真面目に彼女に「太らないか」などと頼む彼氏がいるというのか。 ましてヒトミは健康に悪いほど痩せているというわけでもない。 引き締まるところは引き締まっているが、全体的にはバランスが良く頼りない印象もないし、女の子としては理想の体型と言っていい。 ・・・・いいんだけど。 「はぁ。」 こっそりため息をついて、雅紀は不思議そうにしているヒトミをちらっと見た。 ポニーテールに括っている髪はサラサラ。 目はくりっとしていて表情がよく映るし、控えめな唇は可愛らしい。 おまけに肌はツルツルで、頬には健康的に赤みが差して・・・・一言で言えば「美少女」。 それも完璧な「美少女」なのだ。 「美少女」という意味で言えば、同じクラスの百合香もそう言われているが、あちらは女子には滅法人気がない。 その点、ヒトミは元々が元々だったために男子女子共に人気花丸急上昇中なのだ。 当の本人が鈍感なおかげで、その辺に気付いていないのが今の雅紀にとっては救いだったが。 しかしそんな事は知るよしもない、ヒトミはちょっと苦笑して言った。 「それに、初めて会った時とか雅紀くんだって結構冷たい目で見てたくせに。」 「え?あ・・・・いや、あの時は」 まさかこんなに好きになるとは想像もしていなかったわけで。 ずいぶん丸々した女の子だな、ぐらいの感想だった気がする。 「でも、今なら別にヒトミが100kgだって好きだよ。」 「・・・・ありがとう、と言うべきか微妙だよね〜」 微妙というわりに、頬を赤くするヒトミは文句なしに可愛い。 惚れた欲目を引いたって及第点を軽々と越えていくだろう。 「でもあれだけ太ると身体にも悪いしね。それに、休日毎にシュタインと雅紀くんと遊んでたら運動量だって十分だもん。」 「俺よりシュタインが先?」 「え!?そ、それは言葉のあやってやつで・・・・もう!意地悪!」 「ごめん。」 揚げ足をとってからかった雅紀を、むう、とヒトミが睨んでくる。 本気で怒ってないそんな視線に、ちょっとドキドキして・・・・やっぱり内心、ため息をついてしまった。 「・・・・せめて太ってくれれば、男ぐらいは減らせんのに・・・・」 「?何か言った?」 「なんでも。」 吹っ切ったように笑って、雅紀はヒトミに手を伸ばす。 そして丁度良い弾力の頬を人差し指で悪戯に突いて、苦笑した。 「いーよ。要するに俺が頑張れば良いって事だよな。」 「?よくわかんないけど、頑張って?」 不思議そうにしながらも、そんな事をいうヒトミ。 (・・・・ま、太ったって颯大みたいな奴はいるし。) だったら彼女がダイエットに夢中になってしまわないように、一緒に運動して適度に痩せていてもらって。 (他の奴らが手を出そうなんて思わないぐらい、ずっと一緒にいてやる!) そうと決めたら不言実行。 そんな決意をこめて、雅紀はヒトミに向かって笑って言った。 「りょーかい。頑張るよ。」 〜 END 〜 |